Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「はい」

真夜がパソコンの画面を見せる。そこにはとあるテレビ番組が映し出されていた。株式会社フォレストが水月町に多額の寄付をしていることについての密着番組だった。放送されたのは今から三年前のようだ。

『株式会社フォレストさんには本当に助けられています。寄付がなかったらこの町の復旧はここまで早く進んでいません』

そう笑みを浮かべながら話しているのは、水月町の町長である櫛木寅二(くしきとらじ)だ。寅二のインタビューが終わった後、場面は切り替わり、町に住む人のインタビューが流れていく。

『こんな町は見捨てられると思ってました。でも、神様はちゃんと救いの手を差し伸べてくれるのだとわかりました』

『森さん、本当にありがとう!!おかげでこの町で暮らせています!!』

『これほど人に感謝したことはありません。地震のせいで絶望に突き落とされましたが、希望に今は満ち溢れています』

町に住む人のインタビューが終わった後、スタジオに画面が変わる。女性アナウンサーが笑顔で和也と圭太郎を見ている。生きている頃の圭太郎は、次期社長という立場からか自信に満ち溢れているように見えた。
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