Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜

玉座に座る者

圭太郎は一人暮らしはせず、実家暮らしだった。その家を前にした時、蓮はアノニマスが住んでいるマンションを見上げた時のように家を見ながら「ほえ〜」と声を上げている。

会社社長とその子息が住む家は、豪邸という言葉が相応わしい家だった。大きな門の向こうには広々とした庭と二階建てのヨーロッパ風の家が建っている。

「夏目、ボサッとするな」

「は、はい!」

紫月は蓮を注意した後、門のそばにあるインターフォンを鳴らした。すぐに「はい」という女性の声が聞こえてくる。

「突然すみません。警視庁の者です。森圭太郎さんのことでお話を伺いに来ました」

「わ、わかりました……。少々お待ちください」

女性の声はどこか強張っていた。圭太郎が亡くなったことはすでに使用人に知れ渡っているだろう。三分ほどして、ふくよかな四十代ほどの女性が姿を見せた。犬のイラストが描かれたエプロンをつけており、穏やかで優しげな女性に見えた。

「ご足労いただきありがとうございます。私は使用人の宮沢朋子(みやざわともこ)です」
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