Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「宇山さんは元々別の方とお付き合いをされていたんです。でも、宇山さんに一目惚れをした圭太郎様が強引に自分の婚約者にしたんです」
紫月は結婚式場で見た泣き崩れる咲良を思い出す。あの涙は、夫となる人の死に対する悲しみの涙ではなかったのか。
「ところで、刑事さんが来たということは圭太郎様は殺されたということですか?」
悟の問いに、紫月は「まだ捜査中ですので」と決まり文句を言った。屋敷の人間には圭太郎の死に事件性があることは伏せてほしいと和也に修二が頼んでいた。
「圭太郎様、恨みを持っている人間はたくさんいたでしょうからね」
「いや、まだ殺人と決まったわけでは……」
悟と蓮がそんなやり取りをしていると、朋子が「病死じゃないんですか?」と不思議そうな顔で訊ねた。病死?圭太郎氏は病気だったのか?紫月の心の中の疑問が伝わったのか、朋子が言う。
「実は圭太郎様はここ最近体の調子が良くなかったんです。なので、私の姉の旦那さんの病院に行くことを勧めたんですよ。確かそこで薬も処方されていたはずです」
これは思わぬ収穫だ。紫月はすぐに病院名を教えてもらった。個人経営の病院らしく、この屋敷から歩いて十五分ほどの距離にある。
紫月は結婚式場で見た泣き崩れる咲良を思い出す。あの涙は、夫となる人の死に対する悲しみの涙ではなかったのか。
「ところで、刑事さんが来たということは圭太郎様は殺されたということですか?」
悟の問いに、紫月は「まだ捜査中ですので」と決まり文句を言った。屋敷の人間には圭太郎の死に事件性があることは伏せてほしいと和也に修二が頼んでいた。
「圭太郎様、恨みを持っている人間はたくさんいたでしょうからね」
「いや、まだ殺人と決まったわけでは……」
悟と蓮がそんなやり取りをしていると、朋子が「病死じゃないんですか?」と不思議そうな顔で訊ねた。病死?圭太郎氏は病気だったのか?紫月の心の中の疑問が伝わったのか、朋子が言う。
「実は圭太郎様はここ最近体の調子が良くなかったんです。なので、私の姉の旦那さんの病院に行くことを勧めたんですよ。確かそこで薬も処方されていたはずです」
これは思わぬ収穫だ。紫月はすぐに病院名を教えてもらった。個人経営の病院らしく、この屋敷から歩いて十五分ほどの距離にある。