幼なじみって、言わないで!



つん、と鼻の奥が痛くなる。
勇人は黙って、俺の背中を優しく叩いてくれた。


教室に入って、窓際に行って、もたれかかった。
勇人は目の前に座って、水筒を飲む。


「……俺、最低だ…」


やっとのことで出た声は、掠れてて。


ガラ、と閉めたドアを開けた音にかき消された。


「……あれ、お取り込み中?」


どくん。
胸がまた、痛みに支配される。


「……相良」


勇人は、知ってる。
俺と、相良が、ゆうに惚れてること。


そして今、俺の顔を見て、多分なにか察してくれた。


黙って、教室を出る勇人。
でも俺は、息ができなかった。

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