【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「───僕が階段から落ちた日のこと……覚えてる?」

唐突な問いかけに、面食らいつつ、うなずく。

「覚えてるわよ。忘れられない日だわ」

あれから、まだ1ヶ月くらいしか経ってないのに、なんだかずいぶんと昔のことのように思えた。

「あの日の朝、この指輪を透さんから渡されて───あ、この指輪、透さんの知り合いのデザイナーさんに頼んで造ってもらったんだけど───。
僕、嬉しくて……これをまいさんに渡したら、まいさん、どんな風に喜んでくれるかなって、想像して」

大地の話を聞きながら、罰の悪い気分になった。
……ごめん、反応の薄い女で。

「で、指輪を見ていたら、クラスメイトの……まいさん覚えてるかな、前にまいさんのお店に連れて行ったんだけど……」
「ああ。名前は、忘れちゃったけど……」
「うん───彼女がやって来て、何を思ったんだか、僕から指輪を取りあげたんだ。で、取り返そうとして、僕ら()み合いになってしまって。
運悪く、そこが階段の踊り場だったりしたから、落ちてしまったって、わけ」

淡々と大地は言いきったけど……私の方は、ムッとしながら口を開いた。

「ちょっと待って。
私は、父さんからあんたが、クラスメイトを(かば)って階段から落ちたって聞いてたけど、ひょっとして……」
「そうだよ。庇ったのは、クラスメイトじゃなくて、まいさんに渡す、『指輪』のほう」
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