【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
僕の顔を見て、ホッとしたような表情をしたあと、営業スマイルを向けてくる。
……そう、まいさんにとって仕事中は、僕も単なる客の一人でしかない。

僕の出現によってクソ野郎……もとい、まいさんを店先でナンパしようとしていた男は、いったん口を閉ざす。

けれども、すぐに立ち去る気配はなく、買ったばかりのシュークリームをかじりながら僕がいなくなるのを待つ態勢だ。

───マジで消え失せろ、クソが。

僕は、まいさんが聞いたら確実に引くだろう罵詈(ばり)を内心でつぶやいてから、まいさんに微笑んだ。

「それ、カレシさんからのプレゼントですか?」

シュークリームを手渡されて、会計の段となったのを見計らい、僕は自分の胸もとを指して、わざとらしく尋ねる。

僕の意図に気づいたらしいまいさんが、ベストの隙間から見える細い鎖を引き抜いた。
ネックレスにくぐったシルバーリングが露わになる。

「あ、えっと……彼氏じゃなくて……こ、婚約者からのプレゼントです、けど……」

途中から小さな声になって、まいさんの頬が赤く染まった。
その反応に、僕の先ほどまでの苛立ちが、一瞬で消え去ってしまう。

…………まいさん、可愛いすぎる…………。

僕のなかの醜い感情は一掃され、ついでにナンパくそ馬鹿野郎も、
『なんだ男いんのかよ』
という、分かりやすい顔をしつつ店を立ち去って行った。
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