【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
男の言葉をさえぎって、僕はまいさんを抱きしめるようにして、男から奪い返す。
にらむように見据えた視線の先、男が低く笑った。

「……ちゃんと捕まえとけよ、少年。この人、隙だらけだからな」

僕の耳にだけ届くように、告げてくる。
親切ごかしの言葉に隠された意味に、カッと頭に血がのぼった。

「あんたにそんなこと、言われる筋合いはない!」

ぴしゃりとはねつけると、僕の腕のなかで、まいさんが驚いたように顔を上向かせた。

「大地……?」

邪気のない瞳が丸くなって、僕を見ていた。
いたたまれずに、まいさんから視線をそらす。

「まいさん、歩けるの」
「う、うん……」

酔いが一気にさめたというような、とまどった返事が返ってきた。
……まいさんに向けた僕の口調は、よほど突き放したものだったらしい。

気づかぬ素振りでまいさんの手を引き、タクシーが待つ場所まで歩いて行く。

タクシーに乗り込んだ僕たちは無言だった。

空気の読めないドライバーが、
「仲の良い姉弟だねぇ。酔ったお姉さんをわざわざ迎えに行ってあげるだなんてさぁ」
などと、余計なことを言ってきて僕の神経を逆撫でしてくれた。
……乗車料金、踏み倒してやろうか。

半ば本気でそんなことを思って車窓をながめていると、ひざ上に置いた片手に、まいさんの手が伸びてきた。
< 134 / 140 >

この作品をシェア

pagetop