【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
けれども僕は、そのやわらかな手を振り払ってしまった。
心のなかの、ささくれだった思いが、そうさせていた。

───簡単に僕以外の男に身体を預けていたまいさんが、(ゆる)せなくて。
そして、そんな些細なことに、子供のように癇癪(かんしゃく)を起こしている自分が、情けなかった。

僕の隣で、まいさんが小さく息をつく。
その吐息でさえ、なんだか憎らしくて、恨めしくて。
それ以上に、愛しくて仕方がないのに、素直になれない自分がいた。

窓の外をながめていた目をぎゅっと閉じ、同時に心のなかにある暗いよどんだものにも、(ふた)をする───。


****


「……怒ってるの? 大地」

マンションのエレベーターに乗った直後、ぽつんとまいさんが言った。

「まさか。多香子さんから随分と酔ってるって聞いてたし。
僕の大切なまいさんに、何かあったら心配だから、迎えに行ったまでだよ」

心とは裏腹に、僕はニッコリと笑ってみせる。

───タクシーを降りた時に手を貸したあと、僕はまいさんの手をするりとほどいていた。

エレベーターを呼ぶ風を装って先に歩き、まいさんを振り向きもせず。
それが、怒りの行動からなせるささやかな意趣返し以外の、何になるというのか。
自分のなかにある醜い感情に、いい加減、嫌気がさしてくる。
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