【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「我慢しなくてもいいのよって、私、あんたに言ったでしょ? それは……あんたのなかにある負の感情も、全部受け止めてあげるっていう意味だった」

静かに語るまいさんに対して、僕は、既視感に似た不思議な気持ちをいだく。
……なんだ、これ……。

「だけど、いざ目の前で、荒れた感情を吐きだすあんたを見たら、怖くて……うまく受け止めてあげられなかったのよね、《最初》は」

苦笑いのまいさんの両手が、僕の首の後ろに回る。

「ちゃんと……《いる》じゃない。《隠れてないで》出てきていいのよ?」

僕の心の引き出しを、優しくまいさんが、開けていく。

「あんたは……『五番目の大地』なんだから」

───多重人格者がひとつの人格へと統合されていく話。

『五番目のサリー』。

僕はいつ、まいさんにその小説の話をしただろう?

いつなのか、それは解らない。
でも僕は、確かにまいさんに、それを語ったんだ。
だからいま僕の頬に、あたたかなものが流れているんだろう───。

「あー、ヤバイ」

そんな僕を知ってか知らずか、まいさんが僕の耳もとでつぶやいた。
ついで、とても甘い声が、卑猥(ひわい)な吐息で告げる。

「酒入ってるから、すごくあんたとヤリたいんだけど。ね、機嫌なおして、しよ?」

チュッと音を立てて首筋にキスされた僕は、手の甲で頬をぬぐって苦笑いした。
……適わないなぁ、まいさんには。
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