【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
大地は、呼びかけた私の方を、力のない瞳でボンヤリと振り返った。

一拍おいて、父さんに視線を移す。
言いにくそうに、父さんが口を開いた。

「その……さっき話した、君の、姉さんだ」
「……そうですか。お疲れのところ、わざわざ来ていただいて、すみません」

言って、私を映した大地の瞳には、なんの感情もなかった。
ただ儀礼的に、恐縮したように、頭を下げただけだった。

命に別状はないと、聞いていた。
包帯の巻かれた頭と右手を見る限り、大地のケガの程度は階段から落ちたにしては、軽いものなのかもしれない。

だけど───。

「父さん、いまの、何?」

一瞬、二人が私をだまして芝居でも始めたのかと思った。冗談にしか、思えなかった。

「……ちょっと、いいか?」

ちらりと大地を見やってから、父さんが廊下の方を指した。
私はうなずいて、父さんと病室を出た。

「どうやら大地くんは……いわゆる記憶喪失ってやつに、なってしまったらしいんだ」
「───は? 冗談でしょ? 漫画やドラマじゃあるまいし」

私は鼻で笑ってみせた。
知らない人間を見るような大地の目を、早くなかったことにしたかった。

けれども父さんは、かたい表情のまま、首を振った。

「お前がにわかに信じ難いのは分かるが……事実なんだ。

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