【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
正確には“逆行性全健忘”という状態らしくてな。
大地くんの場合、社会規範や知識レベルは問題ないらしいんだが……何しろ自分に付随する記憶が、そっくり抜け落ちているみたいなんだ。
つまり、事故に遭う前の一切の出来事を覚えていない状態らしくて……私やお前のことはもちろん、亜由美さん───大地くんのお母さんのことも、覚えていないようだ」
父さんの説明を聞いてもまだ信じられなくて、私は首を振った。
「そんなこと……本当にあり得るの? 酷いケガを負ってる風にも見えなかったし……昏睡状態に陥って、一時的に記憶が混乱してるって言うならともかく───」
「お前の言いたいことも、気持ちも、よく解るが……」
なだめるように、父さんが私の肩を叩いた。
「医師が言うには、過去の事例からも時間の経過と共に、記憶を取り戻すことが多いそうだから……根気よく、大地くんが記憶を取り戻すのを、待つしかないだろう」
「……待てば、治るわけ?」
雲をつかむような《記憶喪失》なんてものが、放っておいて良くなるとは到底思えなかった。
……まぁ、だからと言って、昔の漫画やドラマみたいに、同様のショックを与えれば元に戻るとも思えないけど。
「それは父さんも心配しているところだが……医師からも、しばらく様子をみて改善の兆候が見られない場合、“催眠療法”という方法も、検討してみたらどうかと言われてな」
私は目をしばたたいた。思わず、声を荒らげる。
「何? その、『検討してみては』なんて、無責任な言い方! 医者が患者に対して言う言葉!?」
「───あー……だからそれは……」
大地くんの場合、社会規範や知識レベルは問題ないらしいんだが……何しろ自分に付随する記憶が、そっくり抜け落ちているみたいなんだ。
つまり、事故に遭う前の一切の出来事を覚えていない状態らしくて……私やお前のことはもちろん、亜由美さん───大地くんのお母さんのことも、覚えていないようだ」
父さんの説明を聞いてもまだ信じられなくて、私は首を振った。
「そんなこと……本当にあり得るの? 酷いケガを負ってる風にも見えなかったし……昏睡状態に陥って、一時的に記憶が混乱してるって言うならともかく───」
「お前の言いたいことも、気持ちも、よく解るが……」
なだめるように、父さんが私の肩を叩いた。
「医師が言うには、過去の事例からも時間の経過と共に、記憶を取り戻すことが多いそうだから……根気よく、大地くんが記憶を取り戻すのを、待つしかないだろう」
「……待てば、治るわけ?」
雲をつかむような《記憶喪失》なんてものが、放っておいて良くなるとは到底思えなかった。
……まぁ、だからと言って、昔の漫画やドラマみたいに、同様のショックを与えれば元に戻るとも思えないけど。
「それは父さんも心配しているところだが……医師からも、しばらく様子をみて改善の兆候が見られない場合、“催眠療法”という方法も、検討してみたらどうかと言われてな」
私は目をしばたたいた。思わず、声を荒らげる。
「何? その、『検討してみては』なんて、無責任な言い方! 医者が患者に対して言う言葉!?」
「───あー……だからそれは……」