【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
脇を通り過ぎた看護師の耳を気にしてか、父さんがあわてたように私を廊下の端へ追いやった。

声をひそめる。

「外科的処置に関しては、すでに終わっていて……記憶障害に関しては、心療内科……だったかな?
専門家に任せるべきだ、ということらしくてな……」

父さん自身も、要領を得ない口調だった。

私だけじゃない……父さんだって、この状況に戸惑っているんだ。
そう思い直し、気持ちを切り替えて父さんを見た。

「……大地がいま、どういう状態なのかは、なんとなく解ってきたわ。それで大地には、私のことを『姉』だって説明したのね?」
「そうだ。
ありのままを説明するには、私達の関係は特殊過ぎると思ってな。
だが、それでも、大地くんの記憶の回復を考えれば、多少は真実を混ぜた方がいいと思って……。
それで、大地くんがうちに初めてやって来た時の状況───つまり、お前と彼は、異母姉弟だということにしてある」
「……大地が、ウチに来ざるを得なかったって、今の大地に思わせるためね?」
「ああ。
……記憶を無くして不安を感じているだろう彼に、他人に囲まれて生活をさせるのは、酷だろう。
例え記憶がなくても……いや、ないからこそ、血縁関係にある者に対してなら、心を開きやすくなるんじゃないかと思ってな。
だから、お前には悪いが───」
「解ってる。大地の記憶が戻るまで『血の繋がった姉』を演じるわ。
……難しくはないわよ、半年くらい前までは、本当にそうだと思っていたんだから」

心配そうにこちらを見た父さんに対し、自分に言い聞かせるように、うなずいてみせた。


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