【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
同じ顔、同じ声で話しているのに、今の大地は以前の大地とは、あまりに違い過ぎて。
私は、日を追う毎に、《彼》が私の知っている大地とは、別人に思えて仕方なかった。

けれども、大地は大地なんだ。
記憶を失っているだけで、私の好きな大地に違いない。
そう自分に、言い聞かせていた。

と、同時に、どんな大地でも好きだと言いきれないことにも気づき、自己嫌悪に陥ったりもした。

……そんな日々の欝屈(うっくつ)したものが、夢に表れたのかもしれない……。

溜息をつく。
なんだか(のど)が渇いて、私はキッチンに足を運んだ。

消したはずの明かりが見え、不審に思っていると、キッチンで座りこんでいる大地が目に入った。

「ちょっと……大丈夫?」

驚いて近寄ってみると、ガラスの破片と、水らしき液体が、大地の側の床に散っていた。

キャップのゆるんだミネラルウォーターのボトルが、テーブルの上に置かれていて……私は、何が起きたのかを察した。

「───ケガ、してない?」
「……いえ、大丈夫です」

罰悪そうな大地をよそに、散らかった床を片付けた。
それから改めて、大地にミネラルウォーターの入ったグラスを差し出す。

「はい。お水でいいのよね?」
「……ありがとう、ございます」
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