【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
とまどったように、それでも大地は、グラスを受け取った。

床に座ったままの大地の隣に腰かけ、私は自分の分に口をつけた。

……夢の名残があるせいか、そうすることが自然のような気がしたのだけど。

いまの大地には、そんな私の態度は、居心地の悪さを覚えるものだったらしい。
沈黙に堪えられない、といったように、口を開いた。

「……あの。何か……?」

用があるなら、早く済ませて欲しい。
大地の無言の要求に、可笑(おか)しくなってしまった。

私たち二人の気持ちと立場が逆転したのだと、そのとき初めて、気づいたからだ。

───鬱陶(うっとう)しい。
大地にとって今の私は、そんな存在なのだと解ったら、自分が滑稽(こっけい)に思えた。

私は大地を知っていて、彼を好きで。
ただ、側にいたくて。

だけど、記憶をなくした大地はそんな風に自分に好意を寄せる私を、うす気味悪く思っている。

……本当に、大地と初めて会った時の状況に、よく似ている……。

大きく息をついて、大地に向き直った。

「遠慮すんなって、言ったでしょ!」

その額を、指で思いきり弾いてやった。
痛みよりも、そうされた自分に驚きを隠せないといったように、大地が私を見返した。
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