【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
文学作品が並んだ書棚、というイメージしかない。
トオルくんが、パタパタと片手を振る。

「あ、そっちじゃなくてさ。ハードカバーとか新書の方なんだけど。心理学系の本が結構あって。
オレ、一度訊いたことあんだよね、
『お前、こんなの読んで、面白いのかよ?』
って。したら、
『うん。面白いよ。……理解し難いものが、見えてくる瞬間とか、あるから』
なーんて、笑ってたけど。
あいつが知りたかったのは、やっぱ、母親のことと……自分のことだったんじゃねーかって、オレは思うんだ」

そこまで言うとトオルくんは、初めて会った時に見せた、挑むような眼で、私を見据えた。

「佐木さん、オレが前に言ったこと、覚えてっかな?」
「えっ……?」

即座にうなずけなかったのは、彼の言葉を忘れていたからじゃない。
うなずける自信がいま、私のなかで揺らいでいたからだ。

見透かすようなトオルくんの強い眼差しを正面から受け止められず、私は視線をそらした。

「……恥ずかしい話だけど、自信ない。
トオルくんに相談もちかけておいてなんだけど……いまの大地が、大地じゃなく思えて仕方ないのよ」

なじられるのを覚悟で、いまの心境を吐露する。

トオルくんの盛大な溜息が、聞こえた。
ややして、語りかけるような落ち着いた響きの声で、トオルくんが言った。
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