【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「大地はさ、気遣いに長けてる分自分の負の感情、押し殺してきたと思うんだ。……それは、佐木さんも気づいてたと思うけど。

でさ、オレが言いたいのは……佐木さんのいう《いまの大地》ってのも、間違いなくあいつの一部分なんじゃないかって、ことなんだ。

いままで口にださずに胸の内に秘めてたことを全部、言葉してるっていうか。
記憶っていう《たが》がなくなって表面にでてきた、大地のなかにもともとあった、すごく人間的な感情だろうって、オレには思えるよ。

だから、それを知った佐木さんが、あいつを好きになれないっていうなら、それはそれで、オレがどうこう言えるわけじゃねぇけど。

……ねぇけど、さ」

そこで言葉を区切ったトオルくんに、思わず顔を上げた。
じっと私を見るトオルくんの瞳が突き放すような失望をたたえていた。

「あいつが全身全霊をかけて好きになった『まいさん』が、その程度の人間だったなんて……あいつが可哀そうで、やりきれない」

それまでの乱暴な口調とうって変わっての、穏やかな語り口。
なのに、トオルくんの言葉によって、私は、心と身体を両断されたかのように感じた。
息も、つけなかった。

「……とかって言っちゃえるのも、あいつから聞いてた『まいさん』と、いま目の前にいる佐木さんを、オレが知っているからでさ」
< 46 / 140 >

この作品をシェア

pagetop