【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
記憶の回復は、専門家に任せるべき───私も父さんも、医師(せんせい)の意見が最もだと思って、その道を選択した。

……でも。
父さんと違い私は、たった一度の診療によって、あんな風に豹変(ひょうへん)した大地を見てしまっている。

このまま他人(ひと)任せにして良いものなのか。
催眠療法が、大地の記憶を取り戻す最良の方法なのか、疑問に思えてきたのだ。

それで昨日、思いきって心療内科のクリニックへと電話をかけてみたのだけど。

「……守秘義務がございますので、お答えしかねます」
の一点張り。

電話だからいけないのかと思って、
「じゃあそちらへ伺いますので、お時間つくってもらえませんか?」
()いても、返事は一緒だった。

父さんの手前、私の一存で通院を取り止めるわけにもいかず……今日は付き添いがてら、直接交渉してみようと思っていた。

…いま、大地の《頭のなか》で何が起こっているのか、知りたかった。


*****


「……付いて来ないで欲しいんだけど?」

この前は、駐車場で待っていたためか、一緒にクリニックのなかに入ろうとする私を、大地が冷ややかに一瞥(いちべつ)した。

「気にしないで、あんたは治療受けてきなさいよ」

ひるむことなく答える私の相手を面倒と思ってか、大地はそれ以上、何も言わなかった。
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