【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
頬が強張(こわば)り、責めるような言い方となった。
中年女性が苦笑いを浮かべる。

「……詳しくは、先生からお話があるかと思いますので……。
どうぞ、こちらへ」

そう諭され、(はや)る気持ちを押さえ、診察室へと導かれた。

なかは思ったほど広くなく、スチール製の机と、背もたれのある椅子が二脚、置かれていた。
壁ぎわにあるアンティーク調の衣紋(えもん)掛けに、大地が羽織っていたファー付きのブルゾンが、かけられていた。

……大地の姿は、なかった。
それどころか、「先生」とやらの姿もない。

視線をめぐらせていると、隣室に続くらしい扉から、私より少し上くらいの年齢の、白衣の女性が出てきた。結い上げられた栗色の髪と黒縁の眼鏡に、ドラマやマンガにでてきそうな女医だと、感想を抱いてしまう。

「野中さん、進藤さんに付き添っていてもらえるかしら。いま、鎮静剤を打って、落ち着かせたところだから」

私を案内した看護師らしい中年女性に声をかけると、眼鏡の女性がこちらを振り返ってきた。

「お待たせいたしました。
わたくし、当クリニックの院長兼臨床心理士の榊原(さかきばら)と申します。
……大地くんのお姉さん、で、よろしいのかしら?」

ちらりと意味ありげな視線を向けられ、私は眉を寄せた。
言外に、「違うだろう」と、告げられた気がしたからだ。

「……鎮静剤って、どういうことですか?」
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