【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
それには答えずに、看護師の入って行った扉を見やる。
大地が、心配だった。

「───どうぞ、お掛けください。いまの大地くんの状態をご説明いたしますわ」
「……医療行為は、禁止されてるんじゃないんですか?」

ここへ来る前に調べた、にわか知識において、“臨床心理士”には鎮静剤などを使用することは、できないとあったからだ。

「ご心配なく。医師免許ももっておりますわ。医師として必要だと判断し、処置したまでです。
───舞美さん。座ってくださる?」

有無を言わせぬ口調だった。
私を名前で呼ぶのがなんだか自然で、驚いてしまう。

「大地くんの、ために」

付け加えられたひとことに、思わず腰を下ろした。

「大地に……何が、起きているんですか?」

鎮静剤が必要なほどの状態である大地が、心配で仕方なかった。榊原医師は、そんな私をじっと見つめた。
まるで私の瞳のなかに、私が求める答えがあるかのように。

「───真実を知るのが、必ずしも良い結果を生みだすとは限らないのは、舞美さんくらいの年齢になれば、解っていただけますわね?」
「……それは……大地の記憶を操作した、という意味ですか?」

大地が私に語った記憶は、かなり混乱していた。
私との間にあったことと、彼の母親との間にあったことが、錯雑しているようだった。

だから、榊原医師が意図的にそうしたのかと思い、訊き返したのだ。
予想に反し、彼女はゆっくりと(かぶり)を振った。
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