【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「いいえ。わたくしが先日行ったのは、記憶の揺り起こしのみです。
アミタールという薬を用いて、大地くんを年齢退行という方法で幼児期に逆戻りさせました。
彼にとっては、テレビ画面に映る、他人の出来事のように感じたはずです。
そして、目に見えたもの、耳に聞こえたもの、鼻に感じた匂いなどを話してもらいました。
結果、彼の抱えている問題が『単純な記憶喪失』だけではないと、気づいたのですが───わたくしの言いたいことが何か、察していただけますか?」
慎重に言葉を選び、私が知っているであろう事実を、私の口から言わせたいようだった。
恐らく、確信に近いものをもっていても医師である立場から、簡単には患者の『秘密』を口にできないためだろう。
そう思って、私はあえてはっきりと、自分が知り得る事実を言葉にした。
「……大地が、母親から───性的虐待を受けていたって、ことですね」
「……やはり、ご存じでしたか」
榊原医師がわずかに息を漏らして、目を伏せた。
机の上のカルテらしきものを引き寄せ、口を開く。
「こういった言い方は、誤解を招くかもしれませんが……。
職業柄、大地くんのような事情をもつ患者さんと接するのは、めずらしいことではありません。
身近な人間から受けた虐待を克服しようと考える方が、心療内科を訪れるのは、近年ではごく自然な流れになってきましたから。
けれど」
アミタールという薬を用いて、大地くんを年齢退行という方法で幼児期に逆戻りさせました。
彼にとっては、テレビ画面に映る、他人の出来事のように感じたはずです。
そして、目に見えたもの、耳に聞こえたもの、鼻に感じた匂いなどを話してもらいました。
結果、彼の抱えている問題が『単純な記憶喪失』だけではないと、気づいたのですが───わたくしの言いたいことが何か、察していただけますか?」
慎重に言葉を選び、私が知っているであろう事実を、私の口から言わせたいようだった。
恐らく、確信に近いものをもっていても医師である立場から、簡単には患者の『秘密』を口にできないためだろう。
そう思って、私はあえてはっきりと、自分が知り得る事実を言葉にした。
「……大地が、母親から───性的虐待を受けていたって、ことですね」
「……やはり、ご存じでしたか」
榊原医師がわずかに息を漏らして、目を伏せた。
机の上のカルテらしきものを引き寄せ、口を開く。
「こういった言い方は、誤解を招くかもしれませんが……。
職業柄、大地くんのような事情をもつ患者さんと接するのは、めずらしいことではありません。
身近な人間から受けた虐待を克服しようと考える方が、心療内科を訪れるのは、近年ではごく自然な流れになってきましたから。
けれど」