【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!

2.あんたが好きなのは、おれじゃない

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クリニックからの帰りの車中。

私から顔を背けるように窓の外を見やる大地の横顔は、行きとまったく同じ不機嫌さを露骨に示していた。

ただ、その顔色だけが蒼白(そうはく)で、表情は同じでも、心のなかにあるものまでが同じとは考えにくかった。

「───舞美さんをお呼びしたのは、大地くんの抱えた事情を知っている唯一の大人で……彼が信頼を寄せている方だろうと判断したからですわ。

大地くんの人格が変化した原因は、記憶を取り戻したことによって、再度、虐待を追体験してしまったからだと、わたくしは考えております。
つまり、虐待を受けた人間に見られる『解離性人格障害』を、引き起こしてしまっている可能性があります。

非常に申し上げにくいのですが……。記憶を失う前の大地くんに戻すには、現在の大地くんの人格を消去するしかないのです。
あるいは……現在の大地くんのまま、虐待を受けた心の傷を癒やす治療に切り替える、という方法もあります。

倫理的にも心情的にも、難しい判断かとは思いますが───どうするのが大地くんにとって一番良い選択になるのか。舞美さんのご意見を、聞かせていただけますか?
もちろん、考える時間も必要でしょうから、すぐにとは言いませんが───」
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