【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「全部じゃないけど……。
夢のなかの出来事みたいに、薄い(まく)がかかったみたいな曖昧(あいまい)な記憶だけど、だいたいのことは『解ってる』つもりだよ」

言い方に引っ掛かりを覚えて、問い返す。

「解ってる、って……?」
「僕じゃない僕が、まいさんを困らせて───傷つけて。だけど、自分自身も傷ついてるってコト」

あえぐように、大地は息をついた。
熱によるものと、自身の感情を抑えこむような、息遣い。

「僕は……まいさんを傷つける『あいつ』を(ゆる)せない。
だけど、まいさんにとって『あいつ』が僕で……『僕』があいつなら……僕は、どうやってまいさんに赦してもらったら良いのか、解らなかった。
何度か『表』にでてこられそうな時もあった。だけど……まいさんに嫌われるのが怖くて、でてこれなかった」

大地のそのひとことに、カッとなって叫んだ。

「嫌うわけ、ないじゃない! あんたのことそんな簡単に嫌えたら、こんなに苦しい想い、してないわよっ」

言った直後、激しく後悔した。

一番苦しかったのは、大地のはずだ。
なのに……私ったら……!

気まずい思いでうつむく。

ごめんね、と言う、悲しいくらいに優しい大地の声音が、せつなく胸に響いた。
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