【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「あんたはそこに転がって、人形のように、されるがままになってろ。
自分を好きでもない男に……自分も好きにはなれない相手に、身体を(もてあそ)ばれて、言いつけ通りに、動くんだ」

ベッドの上の私に覆い被さるようにして、大地が私を組み敷いた。
感情のない瞳が、一瞬だけ、揺れる。

「おれが、そうされたように」

吐きだされた言葉の意味に、胸がつまった。
やりきれない憤りを抱え、大地を見上げる。

「それが……あんたが私に望むこと、なの……? あんたと同じ経験をしろって?」
「そうだよ。じゃなきゃ、あんたにおれの気持ちなんか───」
「バカじゃないの!」

足を持ち上げ、反動をつけて、大地の横っ腹を思いきり蹴りつけた。

「……っ」
「あんたには、想像力ってもんがないワケ!? バカにするんじゃないわよっ。
同じ思いなんかしなくたって、あんたが……どれだけつらくて苦しくて……誰にも言えない傷を抱えてきたのかなんて……もう、とっくの昔に、解っているわよっ!」

顔をしかめた大地が、動きを止めて私を見返す。理解し難い生き物を見るように。

「同じ経験をしなくても、想像力があれば……他人の痛みだって、自分の痛みのように感じることは、できるわ。
過去の痛みには、そうやって想像を働かせるしかないから。
だけど、いま、目の前にいるあんたの痛みは、ホントに《そんなこと》で、解決できるの?
< 90 / 140 >

この作品をシェア

pagetop