【続】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
いま、ここにいる大地が、我慢し続けてきたことによる『抑圧されてきた感情の表れ』だとしたら……受け止めてあげられるのは、私しかいないのだから。

ふいに、私のあごに冷たいものが落ちてきた。
降るはずのない雨の雫のようなそれは、目を開けなくても、大地の涙だと、わかる。

「……あんたを、傷つけたいわけじゃ、ない……」

絞りだすような声音を受けて、目を開けると、涙をためた瞳が映る。
綺麗な顔立ちが、痛々しいほど苦渋に満ちていた。

私と目が合うと、大地は身体を起こし、横を向いた。

「いつも、思ってた……! あんたが見ているのはおれじゃなくて、あんたに都合のいい『こいつ』なんだって。

おれが、好きなわけじゃない。
おれに、優しいわけじゃない。
おれを、気遣ってるわけじゃない。
……あんたの行動のすべては、おれでない『大地』のために、あって。
あんたの心は、おれには決して触れることがないものだって、思ってた……」
「大地……」

おもむろに身体を起こして、指を上げ大地の頬を伝った涙をぬぐってやる。
一瞬、身を引きかけて、けれども大地は、されるがままになっていた。

「……ごめんね、もっと早くあんたの『声』を聞いてあげていれば良かった。本当に、ごめん」
「───おれは『こいつ』みたいに、良い子じゃないんだ。あんたに何してあげたら良いのか全然想像つかないし。そういうこと考えるの、正直、面倒くさい」
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