眠れる海の人魚姫〜政略結婚のはずが、御曹司の一途な執着愛に絡め取られました〜
隣に嶺人の座る気配がした。思わず上向けば、たくましい腕が伸びてきて強い力で抱きしめられる。耳朶に柔らかな吐息が触れた。
「やっと……やっと美雨を手に入れられた」
それがやたら真に迫って聞こえて美雨の思考が停止する。嶺人の腕の中で体を固くし、はくはくと唇を動かした。何が起きているのか全く理解できない。
もっと防御力の高いルームウェアを着ればよかったと後悔した。薄手のワンピース越しに嶺人の胸板の厚さや体の熱さが伝わってきて今にも心臓が破裂しそうだ。防御力の高いルームウェアって何かわからないけども。鎧?
「れ、嶺人、さん……?」
かろうじて漏れ出たのはその一言。だが耳元で彼はどうやら嬉しげに笑った。どこか夜の密やかさを帯びた、こちらの背筋をぞくりとさせるような響きだった。
「ああ、そうだ。美雨に名前を呼ばれるのはなんというか……満たされるものがあるな」
「名前なんて、いくらでも呼んできたと思いますよ……?」
「そうでもない。昔ほどには呼んでくれなくなった」
思い当たる節があって黙り込む。成長するにつれて自分と彼の立場の違いというものがわかってきたし、何より姉との仲を邪魔してはいけないとあまり近寄らないようにしていた。パーティーなどで出会っても型通りの挨拶をするだけで後は彼がどこぞのご令嬢たちに囲まれるのを遠巻きにしていたのだ。
「やっと……やっと美雨を手に入れられた」
それがやたら真に迫って聞こえて美雨の思考が停止する。嶺人の腕の中で体を固くし、はくはくと唇を動かした。何が起きているのか全く理解できない。
もっと防御力の高いルームウェアを着ればよかったと後悔した。薄手のワンピース越しに嶺人の胸板の厚さや体の熱さが伝わってきて今にも心臓が破裂しそうだ。防御力の高いルームウェアって何かわからないけども。鎧?
「れ、嶺人、さん……?」
かろうじて漏れ出たのはその一言。だが耳元で彼はどうやら嬉しげに笑った。どこか夜の密やかさを帯びた、こちらの背筋をぞくりとさせるような響きだった。
「ああ、そうだ。美雨に名前を呼ばれるのはなんというか……満たされるものがあるな」
「名前なんて、いくらでも呼んできたと思いますよ……?」
「そうでもない。昔ほどには呼んでくれなくなった」
思い当たる節があって黙り込む。成長するにつれて自分と彼の立場の違いというものがわかってきたし、何より姉との仲を邪魔してはいけないとあまり近寄らないようにしていた。パーティーなどで出会っても型通りの挨拶をするだけで後は彼がどこぞのご令嬢たちに囲まれるのを遠巻きにしていたのだ。