眠れる海の人魚姫〜政略結婚のはずが、御曹司の一途な執着愛に絡め取られました〜
けれど少女は澄んだ瞳をきらめかせて無邪気に問うた。
『そうなんですね。この写真はどこで撮ったんですか』
用心しながらとある水族館の名を挙げると、少女は『わあ』と子供みたいに声を弾ませた。
『そこ、最近オープンしたばかりですよね。チケットが人気で取れないんです。いいなあ』
岬グループのツテで簡単にチケットを入手した嶺人は居心地悪く座り直す。少女は何も気づかないようで『そっか。こんなに素敵なら、頑張ってチケット取らないと』と拳を握りしめていた。
その手の小ささを見ていると、なんとなく、嶺人は会話を続けたくなった。
『……そんなにこの写真が気に入ったのか。魚が好きなのか?』
微笑んで写真パネルを見つめる少女の横顔に問いかける。少女はパネルに視線を注いだまま、華奢な顎に手を添えた。
『魚も好きですけど……なんとなく、この写真は私たちに似ているなと思って』
『私たち?』
『はい。小さな箱に閉じ込められて、行く先は決まっていて、それなのに同じところをぐるぐる彷徨っているみたいで。私たちと一緒でしょう?』
歌うように告げられた言葉に、嶺人は胸を衝かれた。それは確かに、この写真を撮るときに嶺人が考えていたことだった。
信頼できない周囲の人間。定められた進路。昨日と同じ今日に、今日と同じ明日。
『そうなんですね。この写真はどこで撮ったんですか』
用心しながらとある水族館の名を挙げると、少女は『わあ』と子供みたいに声を弾ませた。
『そこ、最近オープンしたばかりですよね。チケットが人気で取れないんです。いいなあ』
岬グループのツテで簡単にチケットを入手した嶺人は居心地悪く座り直す。少女は何も気づかないようで『そっか。こんなに素敵なら、頑張ってチケット取らないと』と拳を握りしめていた。
その手の小ささを見ていると、なんとなく、嶺人は会話を続けたくなった。
『……そんなにこの写真が気に入ったのか。魚が好きなのか?』
微笑んで写真パネルを見つめる少女の横顔に問いかける。少女はパネルに視線を注いだまま、華奢な顎に手を添えた。
『魚も好きですけど……なんとなく、この写真は私たちに似ているなと思って』
『私たち?』
『はい。小さな箱に閉じ込められて、行く先は決まっていて、それなのに同じところをぐるぐる彷徨っているみたいで。私たちと一緒でしょう?』
歌うように告げられた言葉に、嶺人は胸を衝かれた。それは確かに、この写真を撮るときに嶺人が考えていたことだった。
信頼できない周囲の人間。定められた進路。昨日と同じ今日に、今日と同じ明日。