眠れる海の人魚姫〜政略結婚のはずが、御曹司の一途な執着愛に絡め取られました〜
「申し訳ございません。西城様とのアポイントメントが確認できませんでした」
「えっ」
狼狽えかけたが、思えば美雨はもう西城ではないのだった。でもそれなら一体どういう名前で予定が入っているのだろう。
しばし考え込んでいると受付嬢の手が卓上の電話に伸びる。警備員を呼ばれるかと身構え、急いでポシェットに手を突っ込んだ。
「み、岬専務からはこれを出せと言われたのですが……」
「はい、何でしょう」
声に若干の不審を滲ませる受付嬢は、しかし名刺を受け取った瞬間、愕然と顎を落とした。
「えぇっ⁉ これって岬専務の名刺じゃない。うわ、しかもこれを持つ人を必ず通すようにって直筆メモが残ってるし」
来客者向けのメッキが思い切りよく剥がれている。受付嬢は名刺と美雨とを忙しく見比べ、ボソリとこぼした。
「じゃあ、岬専務の奥様って……」
「お、奥様?」
上手くいきそうだと思ったのも束の間、何やら不思議な単語が聞こえてくる。きょとんとした美雨に受付嬢が囁いた。
「六時から、奥様とデートのご予定が入っているんです。楽しんで来てくださいね!」
「で……⁉」
途端、真っ赤になって慌てふためく美雨の後ろから名を呼ぶ声が聞こえた。
「美雨!」
「えっ」
狼狽えかけたが、思えば美雨はもう西城ではないのだった。でもそれなら一体どういう名前で予定が入っているのだろう。
しばし考え込んでいると受付嬢の手が卓上の電話に伸びる。警備員を呼ばれるかと身構え、急いでポシェットに手を突っ込んだ。
「み、岬専務からはこれを出せと言われたのですが……」
「はい、何でしょう」
声に若干の不審を滲ませる受付嬢は、しかし名刺を受け取った瞬間、愕然と顎を落とした。
「えぇっ⁉ これって岬専務の名刺じゃない。うわ、しかもこれを持つ人を必ず通すようにって直筆メモが残ってるし」
来客者向けのメッキが思い切りよく剥がれている。受付嬢は名刺と美雨とを忙しく見比べ、ボソリとこぼした。
「じゃあ、岬専務の奥様って……」
「お、奥様?」
上手くいきそうだと思ったのも束の間、何やら不思議な単語が聞こえてくる。きょとんとした美雨に受付嬢が囁いた。
「六時から、奥様とデートのご予定が入っているんです。楽しんで来てくださいね!」
「で……⁉」
途端、真っ赤になって慌てふためく美雨の後ろから名を呼ぶ声が聞こえた。
「美雨!」