眠れる海の人魚姫〜政略結婚のはずが、御曹司の一途な執着愛に絡め取られました〜
嶺人が助手席のドアを開けてくれる。促されるがままに乗り込んで、嶺人が運転席に回ってから気づく。クーペは2ドアで後部座席がないので必然的に美雨は助手席――嶺人の隣に座ることになる。
「美雨、シートベルトをしてくれるか。危ないから」
「は、はいっ」
近くに迫った嶺人の気配にドキドキしていた美雨は慌ててシートベルトを引っ張り出した。けれど緊張に手がこわばり、バックルを嵌め損ねてしまう。
「ご、ごめんなさ……っ」
「少しじっとしてくれ」
「え……?」
まごつく美雨の前に嶺人が身を乗り出してくる。ふわりと爽やかな香りが漂ってきて知らずぎゅうっと両手を握りしめた。彼がいつも使っている香水の匂いだ。ドクドクと脈打つ心臓を抱えるようにひたすらに身をすくめていれば、美雨に覆い被さるような形になった嶺人がくすりと笑った。
「嶺人さん、ど、どうかされましたか」
「いや? 俺の奥さんは可愛いなぁと思って」
「かわ、いい……? ひゃっ」
首を傾げる美雨の額に、嶺人がキスを落とす。ぱっと両手で額を押さえると、すぐ近くで楽しげな笑声が低く響いた。
「ああ、今日の服装もとても可愛い。俺のために着飾ってくれたと自惚れてもいいのか?」
「え、えっと、その……」
上手い切り返しが全く思いつかない。姉ならもっとちゃんとした答えを返せるだろうに。
「美雨、シートベルトをしてくれるか。危ないから」
「は、はいっ」
近くに迫った嶺人の気配にドキドキしていた美雨は慌ててシートベルトを引っ張り出した。けれど緊張に手がこわばり、バックルを嵌め損ねてしまう。
「ご、ごめんなさ……っ」
「少しじっとしてくれ」
「え……?」
まごつく美雨の前に嶺人が身を乗り出してくる。ふわりと爽やかな香りが漂ってきて知らずぎゅうっと両手を握りしめた。彼がいつも使っている香水の匂いだ。ドクドクと脈打つ心臓を抱えるようにひたすらに身をすくめていれば、美雨に覆い被さるような形になった嶺人がくすりと笑った。
「嶺人さん、ど、どうかされましたか」
「いや? 俺の奥さんは可愛いなぁと思って」
「かわ、いい……? ひゃっ」
首を傾げる美雨の額に、嶺人がキスを落とす。ぱっと両手で額を押さえると、すぐ近くで楽しげな笑声が低く響いた。
「ああ、今日の服装もとても可愛い。俺のために着飾ってくれたと自惚れてもいいのか?」
「え、えっと、その……」
上手い切り返しが全く思いつかない。姉ならもっとちゃんとした答えを返せるだろうに。