眠れる海の人魚姫〜政略結婚のはずが、御曹司の一途な執着愛に絡め取られました〜
「私が歩けないのは、きっと嶺人さんを縛り付けておきたいからです。歩けるようになったら、嶺人さんが私みたいな女には見向きもしないってきちんとわかっています。だから私はずっと杖をついているんです……!」
自分で口にするたび、言葉が鋭利な刃物になって美雨の胸をズタズタに切り裂くようだった。胸底から湧き上がる罪悪感と後悔に吐き気がする。
けれどそれは美雨が引き受けるべきもので、逃げることは許されなかった。
嶺人が本当に美雨を愛しているというなら尚更。彼の愛を受けるには、美雨はふさわしくない。
「私は嶺人さんみたいな優しい方に大切にされていい人間じゃないんです。とってもつまらない、嫌な、最低最悪の女です。おわかりですか?」
美雨は自分の胸元を鷲掴み、息を荒らげる。喉が渇いて仕方がなかった。額には脂汗が滲み、杖に縋って何とか立ったままでいる。
うなだれそうな頭を必死に持ち上げれば、嶺人は相変わらず凪いだ顔でこちらを眺めていた。美雨の決死の告白にも心動かされた様子がない。
(嶺人さんにとって私はどうでもいい存在なのかもしれないわ……)
それならそれで構わなかった。このまま嶺人が踵を返して美雨の前から姿を消しても耐えられる。この優しい人を美雨のわがままに巻き込まずに済んでよかったと、心から言える。
けれど、嶺人はわずかに首を傾け小さく頷いた。
自分で口にするたび、言葉が鋭利な刃物になって美雨の胸をズタズタに切り裂くようだった。胸底から湧き上がる罪悪感と後悔に吐き気がする。
けれどそれは美雨が引き受けるべきもので、逃げることは許されなかった。
嶺人が本当に美雨を愛しているというなら尚更。彼の愛を受けるには、美雨はふさわしくない。
「私は嶺人さんみたいな優しい方に大切にされていい人間じゃないんです。とってもつまらない、嫌な、最低最悪の女です。おわかりですか?」
美雨は自分の胸元を鷲掴み、息を荒らげる。喉が渇いて仕方がなかった。額には脂汗が滲み、杖に縋って何とか立ったままでいる。
うなだれそうな頭を必死に持ち上げれば、嶺人は相変わらず凪いだ顔でこちらを眺めていた。美雨の決死の告白にも心動かされた様子がない。
(嶺人さんにとって私はどうでもいい存在なのかもしれないわ……)
それならそれで構わなかった。このまま嶺人が踵を返して美雨の前から姿を消しても耐えられる。この優しい人を美雨のわがままに巻き込まずに済んでよかったと、心から言える。
けれど、嶺人はわずかに首を傾け小さく頷いた。