眠れる海の人魚姫〜政略結婚のはずが、御曹司の一途な執着愛に絡め取られました〜
重なった手の甲に軽く爪が立てられる。決して痛くはないけれど、自身を確実に刻み込もうとするような仕草だった。
「で、ですがっ、入院中に美波姉様とお話ししているのを聞きました。責任を取ると。美波姉様にも謝罪されていましたし」
「俺と美波は壊滅的に馬が合わない。あいつは美雨を本当に大切にしているから、俺みたいな男が美雨の夫になるのが心底嫌だったらしい。だから謝罪した。美雨の家庭教師をしているときもものすごく邪魔されたんだぞ」
「そんなことが……? では、責任を取ると仰っていたのは……?」
美雨の追及に、嶺人は口をつぐんだ。だがじっと見つめ続けていると、不承不承といった態で口を開く。
「それはそのうちにわかる。俺はただ……美雨を危険な目に遭わせた奴らを許すつもりはない」
奥底に酷薄なものが流れる音吐だった。知らずぞくりと首筋が粟立つ。
「一体どういう……」
意味か、と続けようとして美雨はギュッと抱き寄せられた。
「美雨が気にすることじゃない。それより誤解は解けたか? 俺が愛しているのは美雨だけだ。今までも、これからも。――永遠に」
囁きは誓いに似て、背に回された腕は縋るようだった。しっかりとした温もりに包まれ、美雨は目を閉じる。
(全部、私の勘違いだったのね……)
詳らかにされた事実がじわじわと胸に沁み入るにつれて、涙が込み上げてくる。
「で、ですがっ、入院中に美波姉様とお話ししているのを聞きました。責任を取ると。美波姉様にも謝罪されていましたし」
「俺と美波は壊滅的に馬が合わない。あいつは美雨を本当に大切にしているから、俺みたいな男が美雨の夫になるのが心底嫌だったらしい。だから謝罪した。美雨の家庭教師をしているときもものすごく邪魔されたんだぞ」
「そんなことが……? では、責任を取ると仰っていたのは……?」
美雨の追及に、嶺人は口をつぐんだ。だがじっと見つめ続けていると、不承不承といった態で口を開く。
「それはそのうちにわかる。俺はただ……美雨を危険な目に遭わせた奴らを許すつもりはない」
奥底に酷薄なものが流れる音吐だった。知らずぞくりと首筋が粟立つ。
「一体どういう……」
意味か、と続けようとして美雨はギュッと抱き寄せられた。
「美雨が気にすることじゃない。それより誤解は解けたか? 俺が愛しているのは美雨だけだ。今までも、これからも。――永遠に」
囁きは誓いに似て、背に回された腕は縋るようだった。しっかりとした温もりに包まれ、美雨は目を閉じる。
(全部、私の勘違いだったのね……)
詳らかにされた事実がじわじわと胸に沁み入るにつれて、涙が込み上げてくる。