眠れる海の人魚姫〜政略結婚のはずが、御曹司の一途な執着愛に絡め取られました〜
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美雨が美波とラウンジにいる頃、嶺人はクルーズ船のスイートルームを訪れていた。
この部屋の主である、岬グループの元帥――岬源一に呼び出されたのである。
「嶺人、お前の結婚について話がある。儂の許しを得ずに勝手をしたな」
ソファに座る禿頭の老人がギロリと嶺人を睨み据える。嶺人はその前に立ったまま、軽く肩をすくめて返事とした。
「西城美雨だったか。西城ホテル社長の次女で――あの事故でお前を庇った娘だな」
「それが何か?」
フン、と源一が鼻を鳴らした。白い口髭がそよぐ。
「お前はいずれ岬グループを継ぐ男だ。だからこそもっと格式の高い家の女をあてがおうと考えていたのに、歩けもしない下賤の小娘を選ぶとは。責任を取れと泣きつかれたか?」
「いいえ。私は私の意思で彼女を選びました」
嶺人は笑みすら浮かべず平板に答える。源一のため息が部屋に重たく響いた。
「そうだと思った。お前は優秀な後継者だ。だが、だからこそ少しばかり強情で、儂の言いつけを聞かぬところがある。それは岬グループの跡継ぎとしては致命的だ」
「つまり?」
美雨が美波とラウンジにいる頃、嶺人はクルーズ船のスイートルームを訪れていた。
この部屋の主である、岬グループの元帥――岬源一に呼び出されたのである。
「嶺人、お前の結婚について話がある。儂の許しを得ずに勝手をしたな」
ソファに座る禿頭の老人がギロリと嶺人を睨み据える。嶺人はその前に立ったまま、軽く肩をすくめて返事とした。
「西城美雨だったか。西城ホテル社長の次女で――あの事故でお前を庇った娘だな」
「それが何か?」
フン、と源一が鼻を鳴らした。白い口髭がそよぐ。
「お前はいずれ岬グループを継ぐ男だ。だからこそもっと格式の高い家の女をあてがおうと考えていたのに、歩けもしない下賤の小娘を選ぶとは。責任を取れと泣きつかれたか?」
「いいえ。私は私の意思で彼女を選びました」
嶺人は笑みすら浮かべず平板に答える。源一のため息が部屋に重たく響いた。
「そうだと思った。お前は優秀な後継者だ。だが、だからこそ少しばかり強情で、儂の言いつけを聞かぬところがある。それは岬グループの跡継ぎとしては致命的だ」
「つまり?」