四葉に込めた一途な執愛
思い出したように言うと、先生はデスクの引き出しからあるものを取り出して私に差し出した。
「これ、四葉のクローバー」
「わあ、ほんとですね」
陽生先生が見せてくれたのは、四葉のクローバーの押し花だった。シロツメクサの花も添えられてあって、とてもかわいらしい。
「たまたま病院の中庭で見つけたんだよ。何だか四葉さんのことを思い出して押し花にしてみた」
「私に……ですか?」
「ああ、栞にでも使って欲しいな」
「ありがとう、ございます」
心がポカポカと温かい。
すごく嬉しいのに、それでも私の表情は動いてくれない。
「クローバーやシロツメクサの花言葉、知ってる?」
「幸運ですよね」
私の苗字は四葉だし、お店の看板にもなっているので花言葉は真っ先に教えてもらった。
「幸運の他にもあるんだよ」
「そうなんですか?」
「うん、でも秘密」
「どうして?」
「本当は四葉さん、知っているはずだから。記憶が戻った時のお楽しみということで」
口元に人差し指を当てて微笑む表情は、妙に艶っぽくてドキドキした。
それにしても、私は知っている――?
無理に記憶は思い出さなくてもいいと言ってくれるのに、この時は匂わせるような言い方だった。
もしかしたら、私が少しでも思い出せるきっかけになればと思ったのかもしれない。