四葉に込めた一途な執愛
自分の記憶と向き合うのが怖かった理由、それは現実を突きつけられたくなかったからだ。
私は今陽生先生に惹かれているけど、他に想う人がいたかもしれない。
本当は他に好きだった人がいたかもしれないと思うと、真実を知るのが怖かった。
私の中で芽生え始めた恋心は、どこへいってしまうのだろう。
でも、いい加減自分自身と向き合わなければ。
* * *
ディナーの時間まではまだまだ余裕があるので、私は病院近くのカフェテラスに入ることにした。
ホワイトモカを注文してテーブル席に座る。私の味覚は変わっていないようで、記憶喪失になる前から甘めのドリンクが好きだったらしい。
ホワイトモカを飲んで少し心を落ち着けていると、隣の席に座っていた若い女性グループの会話が聞こえてきた。
盗み聞くつもりはなかったが、席が近かったことと彼女たちの声のボリュームが大きかったことで、勝手に耳に届いてしまう。
「これ、彼氏とお揃いのブレスレットなんだ〜」
「へーかわいいじゃん」
「彼氏が一年記念日にプレゼントしてくれたの」
「ブレスレットを贈るのってさ、束縛したいって意味があるらしいよ」
「えー!つまり束縛したいって思われてるってこと!?」
「やめてよ、そういうの!」
「しかもそれ、チェーンじゃん。縛って誰にも渡さないって意味なんじゃないの?」
「だからやめてってば」