四葉に込めた一途な執愛
記憶喪失
「ちなみ、ここがあなたの家よ」
そう言って連れられたのは、ココア色のレンガで作られたおとぎ話に登場する妖精のお家みたいな家だった。
四葉のクローバーが大きく描かれた看板が掲げられており、「フラワーショップ Clover」と書かれている。
その看板にある通り、沢山のお花が出迎えてくれるそこはお花屋さんのようだ。
「我が家は花屋なの。あなたもここで働いていたのよ」
私の母親だという優しそうな女性がそう笑いかけてくれる。
だけど、私には何の覚えもない。
「……」
「わからないか。でもここはちなみの家なんだ。のびのびしていいんだからな」
父親だという男性も優しく私の肩を叩く。
私はこくりと頷き、二人に促されて家の中に入った。
私の名前は四葉ちなみというらしい。
らしいというのは、私には記憶がないからだ。
私は病院で目覚めた時から、自分に関する記憶を全て失っていた。
自分が何者なのか全くわからないまま、私の両親だという人たちに連れられて帰宅した。
そう言っても記憶のない私にとって、ここが自宅だという感覚はない。
家の中に入ってみても、初めて見る光景が広がっていた。
花屋らしく家の色んなところにお花が飾られている。
だけど綺麗だな、かわいいなということ以外何もわからない。