四葉に込めた一途な執愛
私は思わずホワイトモカを咽せそうになってしまった。
危うく舌を火傷するところだった。
きゃっきゃっと楽しそうに会話する女性グループを横目でチラ見し、クローバーのブレスレットに視線を落とす。
違う、これは違う。そんな意味があるわけない。
ブレスレットだからじゃなくて、このクローバーのモチーフを見て選んでくれたんだもの。
縛り付けて束縛したいだなんて、先生が思うわけない。
でも、もしも先生がそんな風に激しい程の愛を私に向けてくれていたのだとしたら――?
そんなことはあり得ないとわかっているけれど、いつも優しい先生の情熱的な一面を妄想して頬が熱くなる。
先生でこんな妄想をしてしまうなんて、なんて失礼なのだろう。
「……やっぱり帰宅したらスマホを立ち上げてみよう」
このまま自分の時が止まったままなのは、やっぱり良くない。
きちんと向き合って前に進まなければ。
それにスマホを見ても特に思い出せることがないかもしれない。それはそれで良いのかわからないけれど。
果たして私は、本当に記憶を取り戻せるのか。
一生このままなんてこともあるのかもしれない。
私はカフェテラスを出る前にお手洗いに寄った。
洗面台の鏡には、能面のような私の顔が映し出されていた。
せめて笑えるようにはなりたいな――。