四葉に込めた一途な執愛


 スマホを握りしめる手は震えていたと思う。
 ディスプレイが映し出されても目を細めようとして、直視ができない。

 往生際の悪い意気地なし。
 私は自分を叱咤し、深呼吸をした。

 どうにでもなれ!と勢いでカメラロールを開く。
 そこにあったのは――


「……え、陽生先生……?」


 私と陽生先生のツーショット写真だった。
 それもただのツーショットではない、まるで恋人かのように寄り添っている。

 心臓が激しく脈打つ。
 何故かわからないが冷や汗のようなものを感じる。


「うっ……」


 突然グワングワンという激しい頭痛に見舞われた。
 動悸が激しくなり、立っているのが辛くて目眩がした。

 ――ああ、そうだ、私は……陽生先生、いや未散のことが――


「――ちなみっ!?ちなみどうしたの!?」


 遠のく意識の中で、必死に私の名前を呼ぶ母の声が聞こえる。

 どんどん頭痛は増してゆく中、何かの箱が開く。
 それは私の中で鍵を掛けていた記憶の箱だったのかもしれない。

 思い出した、事故が起きる直前のこと。
 私という人間の全て。

 私は、忘れてしまいたかったんだ。


「ちなみ!!ちなみ、しっかりして!!」


 母が何度も呼び叫ぶ中、私は意識を手放した。


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