四葉に込めた一途な執愛


 順当に医学部に進み、研修医を経た未散はどんなに忙しくても私との時間を作ってくれた。
 変わらぬ愛情を注いでくれて満ち足りていた。

 でも、社会人になって実家の花屋で働いている自分と釣り合っているのだろうかという不安に見舞われる。
 私は花が大好きだし、ずっと花屋をやりたいと思っていた。

 自分の選択に後悔はないけれど、就活もせずぬくぬくと実家で働ける自分はかなり楽をしているのではないかと思った。
 片や未散は大きな病院に勤める医者。何の資格もない自分は本当にこれでいいのかな、と思うようになった。

 そんな不安を抱えていた時、ある話が持ち上がる。
 それは未散と大きな総合病院の院長の娘との縁談だった。

 未散を気に入った院長が是非うちの娘と、と持ち掛けてきたのだ。
 未散は恋人がいるからと断ろうとしてくれた。

 だが、私はこの縁談を勧めた。


「もしかしたらその病院を継ぐことになるかもしれないってことでしょ?未散の先々のことを考えたらお受けした方がいいんじゃないかな」
「本気で言ってる?俺はちなみしかいらない。子どもの頃からずっと、ちなみと結婚するって決めてる」
「っ、でも……」
「ちなみ、俺と結婚して欲しい」
「私じゃダメだよ……」
「どうして?」


 だって、私では釣り合わない。未散に相応しくない。
 私は未散のために何もしてあげられない。


「ごめんなさい、考えさせて……」


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