四葉に込めた一途な執愛


 幸いにして生活していくことには何の問題もなかった。
 ただ、これまで生きてきた記憶は全て抜け落ちている。

 私は私として生きてきた記憶が何もない。


「ちなみ、アルバムを見てみない?」


 お母さんはそう言ってアルバムを見せてくれた。


「これがちなみよ。かわいいでしょ?」


 そこにはぷにぷにほっぺの赤ちゃんが写っていた。
 今よりも若いお父さんとお母さんも写っており、二人が間違いなく私の両親であることがわかる。

 ページをめくると七五三、小学校の入学式と少しずつ成長していく。
 その幼い面影は確かに自分のような気がした。


「どうだ?何か思い出せるか?」

「……いいえ、何も」


 私はふるふると首を横に振る。


「そうか……」

「ごめんなさい」

「謝ることなんてないよ。焦る必要なんかない」

「そうよ。お父さんもお母さんもちなみがいてくれるだけで嬉しいの」

「ああ、きっとそのうち思い出せるさ」


 両親の優しい言葉が嬉しかった。
 写真からもわかるが、私は両親に愛されて育ったようだ。

 それがわかっただけでも嬉しかった。


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