四葉に込めた一途な執愛

一途な執愛



 振り返る前に抱きしめられた。
 もう離さないとばかりに強く強く抱きしめられ、抵抗することもできなかった。


「お願いだ、ちなみ。どこにも行かないで」

「……っ」

「俺にはちなみしかいない」

「でも、」

「結婚はしない!あの縁談はとっくになかったことになってるんだ。先方の娘さんにはもう別の婚約者がいるんだよ」

「そ、そんな……」

「俺はちなみとしか結婚しない。ちなみだけを愛してる」

「わ、私でいいの……?」


 震えるようなか細い声で尋ねると、抱きしめていた体を少し離して私の頬を優しく撫でる。


「ちなみじゃなきゃダメなんだよ」

「わ、私別に美人でもないしただの花屋の娘だし」

「昔から何度も言ってるだろ?俺にとってちなみは誰よりも綺麗だって」

「本当にいいの?未散のこと好きで……んっ」


 全部言い終わる前に唇を塞がれた。
 すぐに離れたと思ったら角度を変えて再びキスされる。

 一度したらなかなか離してくれない、甘くて濃厚な未散のキスは私の意識を混濁させる。
 何度しても慣れさせてくれない。舌を絡め取られ、呼吸ごと奪われて目の前の未散のことしか見えなくなる。


「んっ、はあ……っ」


 離れた唇からダラリと銀の糸が生々しく垂れ下がった。


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