四葉に込めた一途な執愛


 私は帰宅しても週一ペースで通院することになっている。
 私の主治医は、陽生(ひなせ)未散(みちる)先生。


「四葉さん、こんにちは」


 診察の度に和やかな雰囲気で出迎えてくれる、とても優しい先生だ。
 それだけでなく若くてとても美形である。

 診察を待っている間、別の患者が「陽生先生、今日もカッコよかったね」と頬を染めて話しているのを聞いた。
 こんなに若くてイケメンで優しい先生、モテるに違いない。


「ご実家はどう?」

「お花が沢山ありました」

「そう。リラックスできそう?」

「そうですね、何となく癒されます」

「それはよかった」


 診察と言っても、こんな風に陽生先生と会話するのが主である。診察らしいことは特にしていない。


「花の種類はわかる?」

「何も……母に少しずつ教えてもらってます」

「それはいいね。僕にも教えて欲しいな」

「先生にもですか?」

「恥ずかしいけど、花にはあまり詳しくないんだ」


 そう言ってくしゃりと笑う先生は、陽だまりみたいだと思った。
 私は母から教えてもらったばかりの拙い知識を披露した。


「これはネモフィラです。水色が可愛らしくて春らしいお花です」

「たまにTVで見たことあるな。ネモフィラの花畑は水色の絨毯みたいだって」

「花言葉は、可憐だそうです」

「ピッタリだね」


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