四葉に込めた一途な執愛


「使い方は大丈夫そう?」

「はい、最初はよくわからなかったけど、電話とメッセージのやり取りくらいはできます」


 それ以外はあまり使っていない。
 前はどうだったのか知らないけど、今の私はスマホの使い方も疎い。

 だから最低限の使い方だけで、スマホを使って何をしようとか今一つ思いつかなかった。


「たまに写真を撮るくらいですかね」

「どんな写真を撮るの?」

「大したことじゃないんですけど」


 私はそう言って自分の撮った写真を見せた。
 中にはうちにある花の写真、たまたま遊びに来た野良猫の写真などがある。


「へえ!良い写真だね」

「そうですか?」

「うん、すごく四葉さんらしいよ」

「私らしい……ですか?」


 そう言われてもピンとこなかった。
 それはどういう意味なのだろう。私は花や猫の写真を撮っていたのだろうか?


「――ああ、えっと、可愛らしいって意味だよ」


 それはますますどういう意味なんですか?

 先生は優しいから社交辞令だってわかってる。
 記憶喪失の私に気を遣ってくれているんだ。

 でも先生に可愛いなんて言われたら、意識してしまう。


「そうだ、今日は渡したいものがあったんだ」


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