淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
嬉しい……。
単純かもしれないけれど、今は優しい言葉が心に染みる。

こんなこと、悠稀に言われたことなかった。


「あら、いい雰囲気になってきた。どうぞゆっくり」


店員さんはそう言うと、洗ったばかりのカクテルグラスを持って私たちのところを離れていく。別のカウンター席に座っているお客様に声を掛けると、またあっという間に打ち溶け始めた。

……(とまり)さん。
ユニフォームのネームプレートに、そう書いてあった。

職業柄、お客様と簡単に打ち溶けるタイプなんだ。
私の失恋話を話しをされたときは少しイラっとしたけれど、そのおかげで横にいる彼――岡林先生とも話すことができた。

さっきまでの緊張は、いつの間にか解けている。


「あ、あの……。見ず知らずの私にこんなことしてもらってすみません」

「ん? 別に構わない。悲しい顔をしているよりいいじゃないか」
「……はい」

「でも、君は魅力的だよ。一途な子なんだね」


そう言いながら、岡林先生は自分がオーダーしたカクテルを飲み干す。

一途、か……。
確かにそうだったのかも。

でもその想いとは裏腹に、何度も何度も浮気されてきた。
なにがダメなのか、よくわからない。


「でも、彼にとっては重かったのかもしれません」
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