淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
岡林先生にそう言われ、返事に困ってしまった。

同棲していたマンションには帰りたくない。
だって、悠稀がいる。

今マンションに帰っても、きっともう話し合いはできない。
こうなったら、もうビジネスホテルにでも泊まろうかな……。


「……どこか、安いビジネスホテルにでも」
「は?」
「だって……帰りたくないんです」

「あぁ……そういうことか」


マンションに帰りたくない理由を理解してくれた彼はスマホを操作して地図を表示すると「すみません、ここまでお願いします」と、運転手さんに行き先を告げている。

きっと、近くのビジネスホテルを探してくれたのかもしれない。
なにからなにまで、お世話になりっぱなしだ。


「10分くらいで着く。しばらく休んで」
「はい……すみません」


彼にそう言われ、ゆっくりと瞼を閉じた。

あぁ……今日は、最悪の1日だった。
せっかく仕事でいいことがあって、いい気分で帰宅したのに。

悠稀の浮気から始まり、ふらふらになるまで酔ってしまって。

でも、スッキリした。
明日からは気持ちを切り替えて、仕事に精を出そう。

そんなことを考えながら、車に揺られビジネスホテルに到着するのをひたすら待った。
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