淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
脳挫傷は、強い外力により脳が損傷してしまうことだ。脳に強い浮腫が生じ、嘔吐や痙攣、意識障害を引き起こし、最悪は死に至るケースもあるため、一刻も早い処置が必要となる。

交通事故などで発症することが多いが、今回の様に転倒が原因で脳挫傷を引き起こすこともある。

すぐにタクシーを捕まえて病院へと向かうと、急いで手術着に着替え、オペ室へと入室した。


「あ、岡林先生」
「患者は?」
「はい。脳の浮腫、出血が見られます」

「わかった。すぐ内減圧術だ」


「了解です」と、オペ室の看護師たちがバタバタと準備を始めた。

幸いにも、一命を取り留めた男性。しばらくは脳外科病棟に入院してもらうことになりそうだ。


「岡林先生、ご帰宅後にすみませんでしたね」


術後、手を洗っている俺に声を掛けたのは、先ほど連絡をくれた香坂師長。

夜間の呼び出しを申し訳なく思ったのか、なぜか謝罪の言葉を述べる彼女。


「待機だったから構わない」
「それにしても、やっぱり岡林先生のオペは完璧ですね。先生の判断が早いおかげで、一命を取り留めたのですし」


そう言った香坂師長は、俺に缶コーヒーを手渡してくれる。

得意気に話す彼女は脳外科病棟である3階の師長でもあり、ほぼ毎日顔を合わす。
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