淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
だって、彼が購入したのは真っ赤なバラの花。

それも、24本。
24本のバラの花束は、

〝1日中あなたを想っています〟

という意味を持つ。
だから岡林先生にはきっと、想っている女性がいるのだ。

『話がしたい』というのも、自分には想い人がいるから、1ヶ月前のことはなかったことにして欲しい。とかそういうことだろう。

急遽花束が必要になったのも、想い人にプロポーズをして、私とのことを早く消し去りたいからに違いない。


「さっきの花束、知花に渡す物だったりしてね」


そう言いながら、友香梨は来店したお客様のところへ行ってしまった。

……だから、そんなわけないって。
私なんてきっと、眼中にもないレベルよ。

だからこそ、あの夜のことを忘れて欲しいと伝えておきたいのだろう。私も、早く忘れなければいけない。


「さて、仕事しよ」


そう呟いて、人の目につかないところで頬を軽く叩いてから仕事に戻った。


* * *

「知花、お疲れ様」
「お疲れ様。また明日ね」


閉店を迎えた19時。

更衣室でユニフォームであるエプロンを脱いで、仕事を終えた友香梨に手を振る。

店長の岩田さんはお昼から不在で、友香梨と2人でバタバタだった。忙しい1日だったけれど、たくさんの人を笑顔にできて幸せいっぱいだ。
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