淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
爽やかなオレンジ色のカクテルが、丁寧に私の目の前に置かれた。


「スクリュードライバー。カクテル言葉は『あなたに心を奪われた』だよ」


「岡林は、ずっと君を探してたよ」と付け足した泊さんはにっこり笑うと、席から離れて行ってしまった。

驚きの連続で、上手く呼吸ができない。


「知花。そのカクテルも、俺からだ」

「え……あの。本当に、私を探して……?」
「嘘なら、こんなことしないよ」


花束に触れながら、岡林先生が言う。

そんな、まさか。
友香梨が言っていたことが現実になるなんて。

夢でも見ているんじゃないだろうか。


「あの夜のことが忘れられなくて。ここで話したことも、その後のことも」
「あっ、あれは……!」

「忘れられない。知花が好きだと気が付いたんだ」


心臓が、ドキドキうるさい。

……私もこの1ヶ月の間、彼のことを忘れることなんてなかった。

『忘れないと』と頭ではわかっていても、気が付けばあの夜のことを思い出していた。『二度と会わない』と自分に言い聞かせていただけで、本当はもう一度会いたかったのかもしれない。

情熱的な夜を過ごした、彼に。


「俺じゃダメかな?」


寂しそうに彼がそう言ったので、勢いよく首を横に振って否定する。

ダメなわけない。
私も、もっと彼のことを知りたい。
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