淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
「はぁ……これからどうしよ」


勢い余ってマンションを飛び出したものの、行く当てもない。
同じショップで働いている友香梨(ゆかり)は、今日は婚約中の彼氏とディナーに行くと言っていた。

なんで私ばっかりこんな目に……。

友香梨も、今ここですれ違うカップルも、とても幸せそうなのに。
こんな自分が惨めで情けなくて、段々と視界が滲んでくる。

ダメ。今こんなところで泣いたら、変な人に間違われる。

今にもこぼれそうな涙を拭って、顔を上げたとき。


「あ……おしゃれなお店」


まだ少し滲んだ視界の中に飛び込んできたのは、おしゃれなバーだ。

こんなところがあったなんて、知らなかった。というより、悠稀と同棲を始めてからはあまり飲みに出かけたりしないように気を遣っていた。

仕事で疲れた身体を休めてもらおうと、美味しいご飯を作って待っていたりもしたのに……。


「もう、本当バカみたい」


吸い寄せられるように、お店の中に入った私。

今日は飲む!! 今まで、悠稀に散々尽くしてきた。

友香梨と出かけるのも、飲みに出かけるのも、ずっと我慢してきたもん。
少しくらい飲んだって、きっと私のことを責める人なんていないよね?

なんて都合のいいように考えて、お店のドアをゆっくりと開けた。


「いらっしゃい」
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