淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
車を降りて知花の近くへ行こうとしたとき。1人の男性が知花の側へと走って行くのが見えた。

その男性は知花の手を取るが、彼女の表情は嫌がっているようにしか見えない。

まさか、こんな人気の多いところで痴漢か?
知花の身に危険が迫っていると察した俺は、駆け足で彼女の元へと近付いていく。


「知花」
「あっ……岡林、先生」


名前を呼ぶと、知花はホッとした様子で俺のことを見つめた。

知花の手を掴んでいる男性は、なぜか俺のことを鋭い目で睨んでくる。


「誰だ、お前」
「お前こそ誰だ。彼女をどうする」

「どうって、俺のマンションに連れて帰るんだよ」

「ちょっ……!? 止めてよ!! 私はもうあのマンションには帰らないってば」


知花は全力で拒否しているが、男性は一向に手を離す様子はない。

なるほどな。元カレか。
知花と出会ったとき、話していたのはコイツのことだろう。

彼の発言からして、知花を同棲していたマンションに連れて行くつもりなのだろう。

そうはさせない。
状況を把握した俺は元カレの腕を力いっぱい掴むと、知花との間に入り込んだ。


「ふざけるのもいい加減にしろ。彼女は俺のマンションに帰るんだ。俺の女に触るんじゃない」

「なっ……だからお前誰だ!」
「誰って? 知花の婚約者だ。文句あるか?」
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