淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
俺がそう言うと、元カレの顔が一瞬で青ざめた。

腕を掴んでいる腕の力を弱めると「チッ」と舌打ちをして、逃げるようにその場から去って行く。

すると突然、知花が背後から俺に抱きついてきた。
彼女の腕が、少し震えている。


「知花?」
「……助けてくれて、ありがとうございます」

「彼女の一大事だ。助けて当然だろ」

「ん……嬉しい」


俺の背中に顔をくっつけたままの知花は、俺だけに聞こえるような声でそう言う。


「知花、俺の部屋に来ないか?」
「……えっ!?」


勢いよく顔を上げた知花は、目をくりくりさせて俺のことを見上げている。

頬をピンク色に染めた彼女。
可愛くて、このまま放っておけない。


「また元カレに迫られたら困るだろ?」
「あ……それは、確かに困ります」

「実家暮らしだからって、安心しちゃダメだ」


少し強い口調で俺がそう言うと、知花はコクリと小さく頷いた。

そうと決まれば、俺も安心だ。
本当はもっと違うシチュエーションで同棲を提案する予定だったが、思わぬ方向に転んでしまった。

まぁ、結果オーライってことにしておこう。


「あの……すぐにお店閉めてきます」
「あ、そうだな。でも、ゆっくりでいい。待ってるから」


「ありがとうございます」と言った知花は、それからすぐにお店の後片付けに取り掛かり、お店を閉めた。
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