淡いピンクのカクテルは、私と彼を甘く誘う~凄腕脳外科医に溺愛されています~
お店の近くに停めてあった車に乗り込むと、俺が住むマンションへと車を走らせる。


「知花がいつもお店閉めてるのか?」

「いえ。今日、店長が不在で。企業からの依頼が忙しいみたいで、よく大量の花を抱えて出張してます」
「そうだったのか」


タイミングが悪かったんだな。お店に誰もいないときに、元カレに迫られるとは。


「さっきは……来てくれて、ありがとうございました」


少し照れながらそう言った知花。

たまたま彼女に会いたくて出向いただけだで、まさかあんなことに巻き込まれるとは思っていなかった。でも、大事な彼女が困っているのに助けないという選択肢はないだろう。


「気にするな」


そう言いながら、知花の頭の上に手を置く。

それ以降知花はなにも言わなかったけれど、窓に反射して映った彼女は、とても嬉しそうだった。


* * *

「うわぁ……広い」


俺のマンションに足を踏み入れた知花の第一声。

玄関先では緊張していた様子だったけれど、それよりも部屋の広さに感激しているようだ。


「適当に座って。今、コーヒー淹れるから」
「あっ、お手伝いします」

「これくらい別にいいよ。一緒になったら、知花に頼ることが多くなるだろうから」

「えっ……?」
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